また名言を放ってしまった、村上春樹。昨夜、珍しくまとまった時間を得て、夜中の3時まで、キンドルにて読みふけてしまった。少々前の作品であるが、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」。この人、もどかしさや不条理を表現させたら、天下一品である。(「天下一品」という言葉ははなはだ、「文学的」からはかけ離れた言葉ではあるが。なぜだろう、ラーメンチェーンの天一が悪いのか。まあいいや)。

 

「人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。それはむしろ傷と傷によって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆(もろ)さと脆さによって繫がっているのだ。悲痛な叫びを含まない静けさはなく、血を地面に流さない赦しはなく、痛切な喪失を通り抜けない受容はない。それが真の調和の根底にあるものなのだ。」

 

仲が良いとされていた主人公が含まれる5人組。その中に、精神を病んだ女性と、彼女の面倒を見る別の女性がいる。表面ではわからない、どろどろした関係性。ホントにうまいねこの人、ミスタームラカミ。才能という鉱脈はまだ枯れていないかな。いち早いノーベル賞受賞を強く願う。